お知らせ

No.109 国政研2020東京セミナー(その2)

事務局便りNo.110事務局便りNo.109
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一般社団法人 国土政策研究会
事務局だより No.109
《国政研2020東京セミナー(その2)》

2020.12.7

 令和2年10月15日、東京紀尾井町の都市計画会館で開催された「国政研2020東京セミナー」前半は事務局便りNo.107でお知らせしましたが、その後半をお知らせいたします。

【建設産業研究部会報告】
 埜本信一部会長が本日お越しになれませんので、私、専務理事の小浪博英が代読いたします。
 建設技能工の確保の問題です。熟練労働者の育成です。建設マネジメントと申しますと、従来は材料・工法の選定、出来高・出来形の監督と検査、工事費縮減など物理的側面に着目したものでしたが、ここでは技術、安全、賃金等の人的側面について報告します。そのため、建設技能工の確保と処遇改善が重要であり、また、本人の自覚と責任感及び職業プライドの向上が必要となります。そのため、「土木作業員」という呼称はふさわしくないので、「建設技能工」などの新しいイメージが持てる呼称を考えなければなりません。国交省では「技能労働者」としておりますが、いかがなものでしょうか。3Kも新しく、給与、休暇、希望の3Kになり、社会保険加入と賃金の改善は当たり前です。更に、一人の技能工が鉄筋工、型枠工、コンクリート打設工など、多種類の技能を身に着けて、多能工となることにより自分一人で連続作業を行うことが可能となり、生産性の向上が期待できます。
 なお、特定技能1, 2号の外国人は在留許可の対象になっておりますが、建設業の海外展開のため、
この人たちを国内だけで使うのでなく、母国とか第三国で働いていただくのも良いでしょう。
 ところで、平成26年、品確法改正により、発注者の責務は適正な利潤が確保できるような適正な予定価格の設定、受注者は労働環境改善、適切な賃金水準の確保、社会保険等への加入の徹底、国としては公共事業労務費調査の適正化、実勢を反映した労務単価の設定、適正な予定価格の設定などが基本理念として定められました。しかし、現在のように、過去の実勢単価で積算をして、それを契約額の上限にすれば、労働者の受け取り賃金は負のスパイラルで減額していくという理論的矛盾が発生します。世界の国々でも上限拘束の予定価格制度を取り入れている例はほとんどありません。
 この問題を解決するためには、現行の契約額の上限拘束性を廃止することです。しかし、直ちに廃止することが困難であれば、少なくとも入札評価で入札額算定に用いられた労務単価を加味すると共に、契約後に実際に支払われた労務賃金を確認する制度を導入することが望まれます。米国で1931年に導入されたデービスベーコン法は、上記の提案に応える機能も果たしています。
 以上、ご清聴ありがとうございました。

【地方創生研究部会報告】
 部会長の司波寛です。高いところから失礼いたします。一番年寄りでしたので部会長を命じられ、平成27年、5年も前に発足しました。
 地方は人口減少に加えて東京一極集中で困っています。2000年までは東京一局集中はそれほどではなかったのですが、首都圏への工場等の集中を抑制する法律が2002年に廃止になり、その結果、東京一極集中、特に大学の集中が起こりました。地方から若い人が東京を目指し、東京で就職する。また、地方の親は東京に出てきた子供に仕送りをして、更に集中に対する追い風を送る。
 政府はいろいろ考えて地方での中心市街地活性化とかをやるのですが・・・・。コンパクト・アンド・ネットワークも広がりすぎた市街地を集約しきれていません。都市計画新法施行時点で、市街化区域を絞り込みたかったのですが、農地の宅地並み課税が農民いじめということで広い市街化区域を設定してしまいました。その理屈として、所得が上がれば1戸当たりの敷地が広くなるので、広い市街化区域が必要になる、などの屁理屈をこねました。
 平成30年7月に国政研で出した提言でも申し上げましたが、土地の公的規制など土地制度の改革が必要なのです。私権が強すぎるために空き家・空き地・休耕地・所有者不明土地などの問題が山積しているのです。また、農林業については新しい見方、つまり経済的利益を期待する産業というよりは国の基礎的産業として、その伝統・文化を育む別の看板が必要です。漁業についても同様なことが言えるかもしれません。
 東京一局集中を是正するためには地方での高等教育の拡充と地域構造の変革が必要です。特に中心市街地の活性化と生活拠点の整備が必要なのですが、市街地の拡散の一つの要因は、公営住宅や市の庁舎などが都市計画法第39条の規制から外されており、これらが安い土地を求めて郊外に立地したこともあります。
 国際交流については、海外からの長期滞在予定者に対する語学等の研修の充実が必要です。これらの人々が地方に定住できるための最小限の研修はしないといけません。
 公共交通については、木曽町など過疎地域での過疎バスは公的支援が厚く行われておりますが、まだまだ工夫が足りません。公共交通の在り方は中心市街地活性化と併せて更なる検討が必要です。
 いろいろ言ってきましたがどれもこれも具体性に欠けていて、目下地方自治体からの具体的ご意見を集めております。そうしますと、例えば、「消費税は東京だけ15%にしてその分を地方に回せ」とか面白いご提案もあります。地方の権限、特に土地に関する地方の権限強化などもあります。引き続き検討してまいります。研究部会への参加は自由ですので是非ともご参加ください。
 ありがとうございました。

【水力発電研究部会報告】
 堤利之と福成孝三から報告いたします。水力発電部会は水力発電を再生可能エネルギーとして普及させたく、2011年10月から岩井前会長を中心に活動を開始いたしました。2012年にはFITがスタートしましたが、太陽光が中心になっております。では福成から。
 福成です。目標と現状を申し上げます。エネルギーミクス電源構成では2030年再生可能エネルギーの割合を22~24%に、そのうちの水力発電を8.8~9.2%にしようということになりました。大きく伸びているのは太陽光で水力は遅々として進んでおりません。包蔵水力は沢山あり、2700地点におよぶ未開発地点があります。その対策ですが、初期投資についての財政的支援が必要です。電源三法による交付金の対象に中小も含む必要があります。FITは2012年からありますが、高く買ってその分を消費者に上乗せしており、おおむね10%程度の上乗せになっております。一方で、水力は調査も稼働期間も長いので、これをしっかりとらえた制度が必要です。市場価格に政府が決める一定額(プレミアム)を上乗せするFIP制度(2022年導入予定)も導入されます。水力は公的な地域資源であるので、さらなる買い取り制度の公的関与が必要です。
 送電の系統接続の負担の軽減も問題です。現在は送電費用に多額の負担金が要求されます。河川法、環境関連法、自然公園法、森林法、その他の手続きに時間がかかります。特に水利権の問題、これらを迅速化する必要があります。また、データの面では維持流量の設定と、河川流量の把握と公開が必要です。次に、既存施設の活用です。既存の各種ダム、用水路、これらの活用が考えられます。老朽化して利用されていない施設もあります。地域活用資源として地産地消の公的な具体的計画が必要です。地元の企業も主体性をもって取り組んでもらいたい。自治体も民間任せにしないで、もっと積極的に計画、人、金に関する支援をすべきです。
 代わりまして、堤です。研究部会の活動がコロナで止まっておりますが、既に43回、延べ60名、通常メンバーは10名くらいですが、続けてまいりました。
 水力発電で一番大切なことは適地です。先ず、場所の選定と地元の協力者を探します。次に資金です。100キロワットについて1億円から2億円かかります。東京本社だけでなく地方の企業でないと、結局東京が吸い上げることになるのです。地産地消が重要です。2018年、神通川水系の奥飛騨の砂防堰堤を活用して、地権者と相談し、地元の企業も入り、800~1000キロワットの規模で検討しましたが、中部電力からの系統電源接続料が高額で中断しております。制度改善が望まれます。候補地選定の方法は昭和61年の資源エネルギー庁の調査結果による2800か所のデータがあります。これを利用して候補地を選定します。岐阜県だけで131か所ありました。2019年から安倍川の砂防堰堤で500キロワットくらいのものを静岡河川事務所の協力を得て調査しております。2020年から2021年にかけて静岡県下を中心に、更に幅広く進める予定です。
 今後の研究部会の活動は1000キロワットくらいの規模のものを続けるのはもちろんですが、農水省所管の補助金を使って、経産省のFITも同時に使いながら、補助ダム、砂防ダムを利用しようと思っております。今年4月、エネルギー供給強靭化法ができて、FIPが具体化すると思います。接続系統連携は地域差が大きく、その強化が重要です。災害時の非常電源としての役割もあります。水力発電は50年から100年使える電源ですから、それを理解していただきながら進めたいと思います。以上です。ありがとうございました。

【谷口博昭理事閉会挨拶】
 お疲れさま。榊局長のミニ講演、河野さんの基調講演、3部会からの活動報告、厚く御礼を申し上げます。とても良いセミナーでした。さらに掘り下げていただきたく存じます。冒頭に脇会長からもお話がありましたが、新政権が誕生して変わるべきチャンスだと思います。これからは国土強靭化の推進と地方創生の時代です。つまり分散型国土の形成です。ところが、現在はこれらがプッシュ型、つまりメニューに合えば補助しましょうという方式になっていて、それを否定する必要もありませんが、更に地方の本当の声に応えることのほうが重要だと思います。水力発電でもお話がありましたが、地産地消の時代です。
 総理は自助、共助、公助、絆と言っておられます。それらのバランスをとって進める必要があります。公助にもたれすぎずに進めないといけません。コロナは数年かかるかもしれません。財政的にも大胆な政策が必要です。みんなで頑張りましょう。

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