No.67 トラック実運送研究部会解散
一般社団法人 国土政策研究会
事務局だより No.67
「トラック実運送研究部会解散」
【トラック実運送研究部会解散とその経緯】
平成24年から5カ年にわたり続けてきたトラック実運送研究部会を解散することになりました。
ご支援ありがとうございました。
振り返ってみますと、平成2年に物流二法の改正により規制が緩和されたトラック実運送の世界では新規参入者の増加により、
その後十数年のうちに事業者数が1.5倍となり、
過当競争によって現場のドライバーの賃金低下と勤務条件の劣悪化が指摘されるようになった。
国は法改正の付帯決議に基づき「貨物自動車運送適正化事業対策協議会」を設置したが、
実効性のある施策はなかなか打ち出せなかった。
そこで当研究部会では大阪の一般社団法人運輸中小企業区域変革物流協会(会長:八田廣實)、
東京の一般社団法人中小実運送物流変革協会(会長:冨永昭穂)、
及び静岡のヤマコーテクノ流通株式会社・山﨑運輸株式会社のご協力を得て各種実態調査を行い、
その結果を国土交通省自動車局に報告してきた。
国土交通省は平成26年に「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」を、
平成27年に「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン改訂版」を作成するなど、
法的制約は無いものの、全日本トラック協会、都道府県トラック協会などを通じて業界の指導に当たることとなったが、
その成果は未だ十分とは言えず、「契約の書面化」と「下請代金の見える化」などをさらに進める必要がある。
しかしながら、運輸中小企業区域変革物流協会が概ね初期の目的を達成することができたとして5月に解散され、
当トラック実運送研究部会も報告書のとりまとめ、シンポジウムの開催、国交省への提言など、
トラック業界を取り巻く諸問題について社会的関心を高めるなど、取り敢えず一段落はしたとの認識のもと、
当研究部会を発展解消して新たに「トラック運送取引適正化研究チーム」を立ち上げ、
そのチームに作業を引き継ぐこととしたものである。
この5年の間に2回のシンポジウム開催と2冊の報告書作成が行われた。
平成25年9月、東京都トラック総合会館で開催した
第1回シンポジウム「トラック実運送の安全運行を考える――トラックドライバーの社会的地位向上を目指して――」においては、
国土交通省大臣官房審議官大庭晴彦氏、全日本トラック協会専務理事細野高弘氏の来賓挨拶に続き
国土交通省自動車局貨物課長加賀至、国土政策研究会理事・実運送研究部会会長伊丹淳一、
成城大学名誉教授岡田清、交通事故総合分析センター研究部特別研究員兼研究第一課長西田泰、
高崎経済大学名誉教授岸田孝弥、全日本トラック協会専務理事細野高弘、
及び国土政策研究会副会長高田邦道の各氏から講演をいただき、
続いて伊丹、西田、岸田、細野、高田の各氏によるパネル討論
「トラック実運送の安全運行を考える――トラック実運送の安全運行について、やれることを探る――」を
国土政策研究会専務理事小浪博英の進行のもとに開催し、
実運送の実態、事故の実態、米国の例、など幅広い議論がなされた。
疲れたら休息を取るというプロ意識がドライバーに欲しいという意見に次いで、
「問題は賃金で、金融・保険業の1時間当たり賃金が約3000円、全産業で2100円であるのに、
トラックドライバーは1,605円でしかない。
収入の増加、安全性の向上、良好な労働環境・人間関係の醸成、将来性・安定性の向上、モチベーションの維持がなければトラックドライバーは報われない。」などの議論がなされ、
そのためには、「生産性の向上を図るしかない。アメリカのようにダブル、トリプルのトレーラーも必要だし、
それに応えられる道路の強度が必要になる。
日本の古い道路は20t荷重で設計されており、コンテナが運べない。」、
「ドライバーが誇りを持てるように第三種免許や制服・制帽があればよい。」などの意見が出され、
東京の中小実運送物流変革協会会長冨永昭穂氏から
「6万社が一つになってこの問題を解決しよう。」という提言がなされた。
続いて平成27年11月、東京紀尾井町の都市計画会館において
第2回シンポジウム「トラック実運送の取引環境改善を目指して――トラックドライバーの安全と安心のために――」が開催された。
国土交通省自動車局審議官宮城直樹氏の来賓挨拶に続いて
研究部会長伊丹淳一、一橋大学教授根本敏則、国土交通省自動車局貨物課課長補佐福田ゆきの、
全日本トラック協会専務理事細野高弘、交通事故総合分析センター研究部研究第一課研究員本田正英の各氏から報告があり、
続いて元衆議院議員松浪健四郎、根本敏則、本田正英、株式会社エフ・エー・トラック代表取締役竹中淳雄の各氏と小浪博英の進行によるパネル討論
「トラック実運送の取引環境改善を目指して」が開催された。
ここでは進行の小浪から原価に占める物流コストの割合が米国8.4%に対し日本は4.8%でしかない、
トラックに関連した事故で毎年300人くらいが死亡しており、交通事故による全死亡者数の10%近くを占めている、
など12項目の課題が紹介された後、
仕事がきつくて新卒者が居ない職業、それは一体何なのか、
子供たちが格好良いと思うような服装が必要ではないか、
第三種免許などの顕彰制度と賃金の保証、
デジタコの義務付け、需要と供給で自由に決めればいいという簡単な問題ではない、
地場輸送と長距離輸送とを分けて最低運賃は長距離輸送に、地場輸送は自由競争で良い、
トラックドライバーもきちんと管理してさえいればそれほど危険ではない、
トラックドライバーは2割長く働いて2割安い給料ですが、それでも募集すると集まってしまう、
労働市場に入ってくる人が居る限り賃金は上がらない、
3次下請けまでしか認めないとすれば良い、
トラックが積込み、積卸しなどが大変なので、これを機械化しないと高齢者は入れない、
などの議論がなされた。
これに先立つ平成27年4月2日、国土交通省自動車局長田端浩氏を訪問して、
同局貨物課企画調整官益本宇一郎氏立会いの下、
国土政策研究会会長岩井國臣、トラック実運送研究部会長伊丹淳一から、
①悪しき取引慣行、片務的商取引の是正、
②トラック実運送の経営実態の正確な把握、
③実収運賃が届け出運賃のプラスマイナス15%以内になるよう指導、
④利用運送事業者の取次マージンに上限を設定、
⑤付帯作業の有償化、
⑥燃料サーチャージ、高速道路料金の確実な収受を指導、
の6項目にわたる申し入れが行われた。
報告書は平成26年5月「トラック実運送の安全運行を考える」、
平成27年11月「トラック実運送の安全運行を考える(その2)」を作成して、
関係機関に無償配布された。
更に平成28年11月より当研究会に
「トラック運送取引適正化研究チーム(主査:光井康雄、顧問: 伊丹淳一、同:高田邦道)」を発足させ、
事業者視点からトラック実運送が抱える諸問題の発生要因をトラック運送業界内取引の側面から
課題検証を行った。
その検証結果に基づき研究・対策案をまとめ、
平成28年4月12日には衆議院議員伊佐進一氏の協力を得て、
衆議院議員会館において同氏同席のもと、
国土交通省自動車局貨物課長補佐福田ゆきの、専門官尾崎行雄の両氏に対し、上記研究チームの二名も同席のもと
光井康雄主査より「トラック運送取引の見える化」について提言を行い、
今後もこの研究チームでトラック運送取引の適正化に向けて取り組んでいくことになった。
【事務所の夏季休暇】
8月14(月),15日(火)は事務所をお休みと致します。よろしくお願いします。
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