お知らせ

No.107 10月15日東京セミナー

事務局便りNo.107
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一般社団法人 国土政策研究会
事務局だより No.107
《 10月15日東京セミナー》

2020.10.29

 10月も末になり、いつの間にか冬服が必要になりましたが、会員の皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしのこととお慶び申し上げます。本号は、10月15日に開催された「国政研2020東京セミナー」~日本の元気を取り戻そう~の概要をお知らせいたします。

【開会挨拶・来賓挨拶】
 脇雅史会長による開会挨拶では、「新聞によれば、コロナによる重病者や死亡者がここ3ヶ月、減少傾向にあるように思われるが、陽性でも発症に至らない人がビールスと一緒に歩いている可能性があることに留意しなければならない」というお話から始まり、政治と行政との役割分担についてのお話があった。総理大臣の発言を振り返ってみると、民主党は10年前に「日本の民主主義の勝利だ」と言い、今回の自民党は「我々は選挙に勝った」という。しかし、投票率60%の選挙で得票率60%の勝利を得たとしても、掛け算すれば36%にしかならず、行政の長である総理大臣がまるで国全体から支持されたような発言をするのはいかがなものであろうか。むしろ、行政は政治を離れて、国民全体のことを考えるべきであり、行政府に配属された政治家は政党色を消すべきではないだろうか、とのお話であった。いずれにしても国政研はそれぞれの地方が独自に考えることを支援したいという気持ちを述べられた。
 続いて国土交通省都市局長の榊真一氏による来賓挨拶があり、3年前、同局の審議官であった時のことと、今回、局長に着任して思うことを話された。
 3年前、審議官で在職した時は都市開発の海外展開が話題になっており、「マルドメ」、「まるでドメステイック」と言われていた国土交通省が、海外に出てゆこうとすることに対して若干の違和感を持ったものであった。しかし、2014年、JOIN(株式会社 海外交通・都市開発事業支援機構)の設立、その技術的支援のためUR都市機構の海外業務拡充などにより都市開発の海外展開が始まった。2015年から本年10月までに海外の32プロジェクトに投資して、そのうち10プロジェクトが都市開発になっている。そして3年後、都市局長で戻ってくると、今度はスマートシテイだという。去年の春の経済財政諮問会議では安倍総理から石井国土交通大臣に「これからはスマートシテイをまちづくりの基本としなさい」とのご下命があった。これを受けて昨年8月には都市局で中間とりまとめをして、その秋からは経団連と共に、企業が持つシーズと地方自治体が必要とするニーズのマッチングが始まっている。ただ、東大の森川先生に言わせると「スマートシテイの行く先は分かりません」となる。なるほど、電気が開発された時を考えると、それが洗濯機を動かし、カラーテレビを映し、冷蔵庫やエアコンが登場することをだれが予測できたでしょうか。スマートシテイも同じで、都市局としてはあらゆるデータを相互に連携させて新しい時代に備えようとしている。人口減少でDIDが無くなればコンビニも消えてしまうかもしれない。それを防ぐのが、コンパクトシテイであり、ネットワークの活用ではないでしょうか。過剰な密を作らないで、人と人が触れ合うことにより新しい知恵が生まれると思う。というお話でした。

【基調講演・森ビルの考える地域づくりの原点】
 続いて、森ビル株式会社の特任執行役員 河野雄一郎氏の講演に移り、54枚のスライドを使ってプロジェクトの紹介とその考え方のお話があった。東京の六本木ヒルズ、アークヒルズ、虎ノ門ヒルズはみんな超高層であり、これらの地域では、森ビルは「垂直の庭園都市」、Vertical Garden City、を考えている。例えば、土地が3ヘクタールあったとしよう。そこに50階建ての建物を建てて100㎡の住宅を300戸整備したとする時に建蔽率はたった3%であり、残りの97%を緑や水面などの公的な空間で利用できる。これを2階建ての住宅にすれば建蔽率は50%、それにそれぞれの家の庭や道路などが必要となって、緑などの公的空間は殆ど取れない。1世帯3人とするとヘクタール300人のかなり高密な市街地ではあるが、このような場所では超高層が有利なのである。次に重要なことは木造密集市街地の改善である。道路は狭く火災に弱い地域に於いて、災害時に「逃げ出すまち」から「逃げ込むまち」にできるのである。また、制振装置の整備により東日本大地震においても六本木森タワーの揺れは54階で片側僅か32㎝でしかなかった。電力についても電力会社からの受電、都市ガスを使った自家発電、備蓄灯油を使った自家発電の三段階に及ぶ電力供給で無停電を実現している。また、地球温暖化に対しては公開空地の緑により地表温度が極めて低く、その効果は絶大である。空地や屋上を緑化して人と自然との共生ができるのである。また、同じビルの住人が緑地やそこでのイベントを通じてコミュニテイを形成することもある。これも見逃せない効果であろう。そのほか、高松、岐阜、広島、熊本、新潟、大津、松江、岡山、永平寺などの紹介があり、必ずしも超高層だけにこだわっているのではないことも分かった。
 以上のほか、建設産業研究部会、地方創生研究部会、水力発電研究部会からの報告があったが、本号では省略する。
 
 最後に国政研の谷口博昭理事(建設業技術者センター理事長)から、「これからは自助、共助、公助、絆を大切にして、地方の本当の声を聴かなければならない」との閉会の言葉があった。

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